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清家 篤先生の新著『雇用再生』にいささか違和感あり。

清家 篤先生の新著『雇用再生---持続可能な働き方を考える』を読ませてもらいました。
読み終わっての印象は、清家先生は日本独特の雇用慣行である「終身雇用」温存派なのだなあということです。そのために年功賃金における賃金カーブについてはさらなるフラット化などを提唱されていますが、これからの日本の経済成長を支える高付加価値財・サービスを生み出す源泉としての人材育成の観点からもできれば一社で長く勤めあげる雇用形態を称えておられる。

私は正直申し上げて賛意表明とはゆかず、やや違和感を覚えます。

清家先生は著書の第2章冒頭部分で、「そもそも、企業の目的は人を雇うことではない。・・・・・・・製品やサービスの生産のためには労働力が必要であるから、人を雇用するのである。」、「雇用は手段であって目的ではない。」との大前提を立てておられ、このことはこれからの日本の雇用の在り方を考えるに際して改めて再認識すべきことだと私も大いに共感するものです。

然しながら、先生のその後の論述はゆきつくところ、いわゆる「正規雇用者」を定年まで大事にして頑張って行こうねという論理としてしか受け取れませんでした。先生は「正規雇用者」の定義を次の三条件を満たしていることとされています。①会社などによる直接雇用②期間の定めのない雇用契約③フルタイムの労働であること。この定義も世に一般的に理解されている定義として理解します。でも、なぜこのことから、正規雇用者(正社員とほぼ重なる)の「終身雇用」へと結びつけられなければならないのでしょうか。先生の論理に違和感を覚える最大のポイントがここなのです。

企業にとっても労働者にとっても、経済環境が許すならば終身雇用保障が一番いいと日本人なら誰もが思うでしょう。だって、「仕事」がなくなっても直ちには解雇されず、できる限り企業内に抱えることが終身雇用だからです。しかし辛いことに、企業は場合によっては抱えきれなくなってきたために(客観的合理性と社会的相当性がある)整理解雇を行ったり、早期退職や希望退職、さらには陰湿な「追出し部屋」的な措置を講じているのが現実の労働社会です。

実定法上は、就業場所と従事業務を明確にして労働契約を締結すべしとなっているのに、それを空白にして「会社都合によって勤務地や仕事の変更を命じることがある」という就業規則を盾に労働者を好き勝手に使う、労働時間も会社の命じる長時間労働に従わざるを得ないという歪んだ状況が生まれているわけです。

私は、清家先生が立てておられる大前提である「雇用は手段であって目的ではない」の基本に立ち返って、「契約した仕事がなくなれば原則は雇用契約解除、ただしその時点で別の仕事がありその仕事について労使合意すればもちろん再契約は好ましいこと」という契約の在り方が通常一般の雇用契約であるべきではないかと考えるものです。何もすべての雇用契約を労基法上の雇用契約に変えるべきと言っているのではありません。会社を背負って立つ基幹人材として、いろいろな勤務地でいろいろな仕事をすることを期待するエリート労働者とは、これまでのような契約を維持すればいいのです。ただ、そうではない普通の労働者とは「普通の」雇用契約を締結することを言いたいのです。清家先生が挙げられた正規雇用の三条件はいずれの契約であっても共通です。ただ、勤務地や仕事の変更を含む終身勤務を期待される労働者と、特定の場所で特定の仕事を期待される労働者とに区分されるということです。後者は濱口桂一郎先生が提唱されているジョブ型労働者(世間では限定正社員)と呼ばれるタイプです。

繰り返しになりますが、高付加価値を生み出す人材を大事に育てることと終身雇用とは結びつかないということです。清家先生は終身雇用の美しい面を強調されていますが、現実の企業現場では、終身雇用にどっぷり浸かって自己練磨を怠り、その組織の中をうまく泳ぐテクニックを身につけることに躍起になっている人間がどっさりいるのです。このような現実社会は学者先生には理解できないのではと思っています。それこそ、終身雇用の一面だけを机上で考えておられるのにすぎないのではないでしょうか。企業はそういう人材を持て余しているのです。

清家先生の仰る『持続可能な働き方を考える』ためには、終身雇用にしがみつかずに、それ以外の雇用形態など雇用の選択肢を広げる必要があるのではないでしょうか。選択肢の拡大こそが、持続可能な働き方の選択肢なのではないでしょうか。

先にこのブログで申し上げたように、「正社員」とか「正規雇用」という慣行的表現を用いるがゆえに、論述が情緒的・感覚的になるのです。学術的な論述を展開するときは、法律用語を用いて説明すべきだと思いますが・・・・。
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プロフィール

畠山 奉勝

Author:畠山 奉勝
1944年生まれ。電機メーカー定年後、大阪労働局監督課で指導員を担当。全国に先駆けて大学生・高校生などを対象にした若者労働法教育のレールを敷く。

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