濱口桂一郎先生著『日本の雇用と中高年』を読み終えて。

ほぼ一カ月ぶりのブログ更新です。
5月は好天が続いたため、連日、野山を歩き心身を活性化させ、さらに三陸沿岸の被災地を北から久慈〜宮古〜釜石〜気仙沼〜石巻と4泊5日で復興の現状を見てきました。震災直後の「被災された人々を慰め傷をなめる」ためではなく、元気で前向きな姿を喜び合う『港町ブルースの旅』と恰好つけて各地で地元の人たちと交流してきました。

さて、落ち着いたところで、5月9日に届いていた濱口桂一郎先生の『日本の雇用と中高年』を読みました。旅先の車中で軽く読んでは失礼なので、旅の整理も終えたところで、しっかりと読ませていただきました。

いつもながら濱口先生の著書の一番いいところは、歴史的perspectiveの中で論理展開されていることです。目先の現象をみて感情論を展開する一部の経済学者などと対極の世界です。私自身が1967年から2004年の間、電機メーカーで人事労務を担当していましたので、当時の労務管理をなぞるような感覚で読ませてもらいました。

私が入社した前年、その会社は「仕事別賃金」と銘打ってマスコミの話題をさらっていました。当時、私の入った会社は週5日制など常にわが国のトップを切って、先進的な労務管理を展開していました。濱口先生が書いておられるように、職務給思想をめざしていたのです。製造現場の仕事については個々の職務を克明に分析し、「知識」、「習熟」、「肉体的負荷」、「精神的負荷」の4要素で評価・格付けした職務記述書を備え、事務技術職については担当者によって仕事の奥行が異なるため毎年1月15日現在の担当仕事内容調査表を記述させることによって、実際に担当遂行している「仕事」を評価していたのです。ただ面白いのは、このように格付けされた仕事ランクによって本給絶対額や賞与絶対額が決定されるわけではなく、そのランクによって「昇給額」や「賞与支給率」が査定されるのであって、同じランクの仕事を担当していても、昇給回数(勤続年数)が多い従業員の賃金が高いという年功賃金なのでした。すなわち、所詮は年功賃金なのですが、何とか職務給的要素を取り入れようとしていたのですね。私は「仕事の格付け」の仕事を担当していましたので、その時期は膨大な職務分析・評価に追われぶっ倒れる寸前の残業で大変でした。

濱口先生の「限定正社員」論については私は以前から一貫して支持しており、それが中高年労働者の救済でもあるという説にも同感であります。そして私が限定正社員を支持するもう一つの気持ちは、中高年労働者が自己の仕事についてspecialty や professionality を高め、企業との関係の強度を Weak Ties とすることによって、自主独立の労働者としてのprideを高めるシステムとして機能することを期待するからです。
中高年労働者は企業との間にstrong な関係性を求めたりせず、しがみつかないことです。1960年〜1970年代の日本的雇用システムに郷愁を抱いていては、あらゆる改革に対して批判する言動しか生まれず、そこからは何も良くならないのです。

大学などを卒業して企業に就職するとき、多くの若者は「新卒の幹部候補生」などともてはやされがちですが、基本的には「普通の一般労働者」であることを肝に銘ずべきです。エリートというのはその中のごく一部にすぎません。若い人にとって夢のない言い方で申し訳ないですが、幻想に浸っていてはダメなのです。私が知っている分かり易い例を挙げます。例えばJR東海では、「事務系総合職」と「技術系総合職」をそれぞれ20人〜30人募集します。これが企業の根幹を担う幹部候補生で無限定正社員です。そのほかに運転士や車掌など現業系の一般職を数百人採ります。これは典型的な一般職で限定正社員に近いものと思われます。ただし、一般職でも上を狙う機会は当然あります。

最後にもう一言。”Work Longer” と言うと、またまた多くの労働者や団体は、卒業して入社した企業に一生しがみつくようなイメージを抱くかもしれませんが、そうではなくて、わが国の企業社会・労働社会でしたたかに、自分の力量を長く発揮していくのだと理解していただきたいと思います。「職人」さんのワークスタイルから学ぶべきだと思います。

濱口先生は中高年労働者に対しても優しいスタンスを保たれていますが、私は企業の中に居たからこそ、やや厳しく叱咤激励するつもりでいつも書かせてもらっています。
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プロフィール

畠山 奉勝

Author:畠山 奉勝
1944年生まれ。電機メーカー定年後、大阪労働局監督課で指導員を担当。全国に先駆けて大学生・高校生などを対象にした若者労働法教育のレールを敷く。

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